2012年

4月

12日

山下祐介著『限界集落の真実』

 山下祐介著の『限界集落の真実―過疎の村は消えるか?』を読みました。

 自分自身が田舎育ちということもあり、とても興味をひかれるタイトルでした。2007年ごろから色々なところで耳にするようになった限界集落。確かに、実家のある地域を想像してみても、子どもたちはおらず、高齢者やこれから高齢者になる50代の中年層ばかりが暮らしています。そんな地域が本当になくなってしまうのだろうかー。山下さんはフィールドワークによる調査と統計的なデータにより、様々な角度から、限界集落と呼ばれるような地域を作り上げてきた日本社会の構造をあらわにしてくれています。

  特に、その中でも興味を持ったのが「世代間の地域住み分け」という考え方です。限界集落問題は単なる農村地域から都会への人口流出ではなく、その中で家族の世代間の地域住み分けが起きている、というのです。

 世代の高い人たちは農村地域で先祖からの方法で生計を立て、若い人達は都市部で就業し、子どもたちに教育の機会を提供する。そう考えると、一見、お年寄りしか住んでいない地域も実は多様な人たちによるネットワークにより支えられていることが分かります。それは次の文章からも見て取れます。「しかしながら、例えば、そうした人々の電話の横に貼ってある、家族や親族の電話番号簿を見ればどうだろうか。都市部に暮らす家族や親族のネットワークと違って、よほど数多くの顔ぶれが並んではいないだろうか(208p)」。本書の中には、週末だけ田舎に帰って町内会の活動に参加したり、畑や田んぼを行っている人なども事例が出てきています。

 

 これを読んだ時、イギリスの社会学者ピーター・タウンゼントの『居宅老人の生活と親族網−戦後東ロンドンにおける実証的研究(山室周平監訳)』が頭に浮かびました。本書は、イギリスの大都市、東ロンドンのベスナル・グリーンという自治区の高齢者の生活について、丹念なヒアリング調査を行い、その生活構造を詳細に描写したものです。高齢化率が増加する中で、多くの高齢者が家族から孤立して生きているのではないか、という仮説から始まったこの調査では、実は、独居高齢者であっても兄弟や子ども、或いは、従弟などが高齢者の家に足しげく通い、家事や食事、金銭管理などを行っているという事実を突き止めています。こうしたネットワークによる家族を「拡大家族」と表しています。

 家族というのは本当に不思議で「一緒にいなければ家族じゃない」なんて思っていた時期もありましたが、イギリスでも日本でも、大きな社会構造の変化に対応するように、家族の形態を、家族の構成員自身が変化させてきている。家族って本当に強いんだなと再考させられました。

 

 

 

 

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