災害時における福祉施設の役割

 災害時、福祉施設は地域の要援護者支援という点において、大きな役割が求められます。通常、入所機能のある福祉施設では入居者への支援が中心であり、地域の要援護者への支援はそれほど行っていないというのが現状です。しかし、災害時には元気な高齢者が避難所で体調を崩したり、例えば、何とか在宅サービスを使いながら自宅で暮らしていたが、在宅サービスが提供されなくなってしまっため、自宅での生活が困難になってしまったちうようなケースが東日本大震災でも見られています。

 福祉施設においては、まず、自施設内の利用者の安全を確保し、利用者の安全が守られるという前提条件にはなりますが、福祉施設が有している様々な機能(例えば、比較的堅牢な建物、スペースがある、専門職がいる等)を活かして、積極的に地域の要援護者支援を行うことが求められます。

 

多くの福祉施設は地域の要援護者支援に積極的

 東京都社会福祉協議会が平成24年に行った調査では、都内の福祉施設(高齢、障害、児童、保育、母子等)において、自施設の利用者の安全性が確保されたことを前提に、どの程度、地域の要援護者の支援を行うことができるか伺った設問では以下のような回答が見られています。

1)災害発生直後に9割近くの施設が「共有スペース」の提供が可能

 直後は、利用者の安否確認等が優先されるため、共有スペース以上の提供は難しいとも言えます。ただし、この点については、後にも触れるように「避難所」としての機能を福祉施設、行政、そして、関連団体とどう考えるかという点に大きく関わってくる点でもあるので非常に重要なポイントです。

2)災害発生から3日以降、体制が確保できれば受入れ可能な施設も

 災害発生から3日経つと、4割弱の施設が「日中」「夜間」の受入れが可能と回答しています。ここで気をつけていただきたいのは、福祉施設での「受入れ」には2種類があるということです。1つは入所機能です。行政処分による措置入所、もしくは、介護保険や障害者自立支援法等に基づく、利用契約による入所があります。もう1つは、避難所としての受入れ機能です。この2つは、同じ「受入れ」という言葉で括ってしまっていますが、意味するところは大きく違うので、注意が必要です。この調査での「受入れ」は、「日中」や「夜間」という聞き方をしているので、避難所機能としての受入れと考えて良いでしょう。

 もう1つ、この「体制が確保できれば」という点は、極めて注意が必要なのですが、これも後ほど触れたいと思います。

3)行政や地域との役割分担、人員確保が必要

 受入れの課題という点で挙がってきたのが、この行政や関係機関、地域との役割分担です。およそ7割の施設が回答しています。ここでは、どういった役割かまでは言及していませんが、およそ以下のことが考えられます。最も大きなものとして、

①要援護者の種別、レベル、時間ごとにどのような避難モデルを描くのか

②地域の要援護者に対する物資等の用意

③情報発信とその収集、そして、対応方法

の3つが考えられると思います。②については、福祉避難所としての指定を受けれいれば、行政で対応すべき課題となります。福祉避難所指定を受けていなければ、各施設での独自の取組みとなってしまいます。また、①や③については、この東日本大震災で、どのような分担が実際にされたのかを検証する必要があります。措置施設が中心の児童と利用契約が中心の高齢では、対応のありかた等も違うでしょう。

4)取組みの前提となる施設利用者の安全確保

 これは、多くの施設の考え方として全うだと思われます。自施設が機能していないのに、その他の要援護者の支援などできるはずがありません。しかし、災害時(特に大きな被害が出た場合)には、雨風がしのげる、寝られる場所がある、人がたくさんいる、情報がある、水が出る、(簡易でも)トイレが使える、ということが分かれば、どういった施設であっても外から地域住民が避難してきてしまいます。その際に「利用者への対応で手がいっぱい」「職員が少ない」という最もな理由は、地域住民には伝わらないことが予想されます。

 そうした意味では、福祉施設には予め建物損壊や家具転倒を防止し、自施設の利用者や従業員の安全性をできるだけ高めておく必要があると言えます。

 

福祉施設の訓練の事例

・町田市の特養町内会合同によるBCP訓練(平成24年1月22日)

 詳しくは出歩き・つぶや記を参照

・多摩市の特養で入居者への食事提供訓練(24年2月23日)

 詳しくは出歩き・つぶや記を参照

 

福祉施設におけるBCP策定に関する資料集

1)浜銀総合研究所

福祉事業所における事業継続計画(BCP)策定ガイドライン(浜銀総合研究所)
福祉事業所における事業継続計画(BCP)策定ガイドライン.pdf
PDFファイル 842.6 KB
突発的に発生する緊急事態における社会福祉事業の継続に向けたモデル事業継続計画策定とその普及事業 報告書(浜銀総合研究所)
突発的に発生する緊急事態における社会福祉事業の継続に向けたモデル事業継続計画策定
PDFファイル 2.8 MB

2)東京都社会福祉協議会

 高齢者福祉施設におけるBCP策定ガイドライン(震災編)〔初版第2刷〕

 著者 齊藤 實

 編集 東社協高齢者施設福祉部会・センター部会 大規模災害対策検討委員会

 

 定価(税込み) 1000円
 発売日 2012.03.08

 サイズ A4判

 ページ数 64頁

 
 ISBNコード978-4-86353-107-9

 

 http://www.tcsw.tvac.or.jp/php/TBookSyousai.php?key=100389

 

 


3)全国社会福祉施設経営者協議会

福祉施設経営における事業継続計画ガイドライン(目次のみ)
福祉施設経営における事業継続計画ガイドライン.pdf
PDFファイル 282.0 KB
福祉施設における事業継続計画 事例集(目次のみ)
福祉施設における事業継続計画 事例集.pdf
PDFファイル 382.6 KB

 

4)その他

20100319_ガイドライン(最終版).pdf
PDFファイル 1.5 MB

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